ひとりの海の夜に/番田
いくつもの音階なのだ
テーブルの上にある 声は
落とされていくその言葉として聞かされた
その言葉として そこで 転がった
言葉の響きを聞いた
テーブルの上にいた 僕は
今はもうすでにない 言葉のその音を手に入れた
今はもうすでに朽ちて 消えた 道に
手の中で叫んだ僕の声は
今はもうすでに無く もみ消された
仕事を無くした日に 朝の港に出かけた
海はそこに無い 道だと知った 車のアクセルを踏みしめた
人は浜辺に立つ日を思い浮かべた
浜辺の中に波を抱いた 沖に出ては 戻ってくる
海はそこにあるのだと 言葉の世界で消えていく
僕をじっとそこに立たせた
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