ぼくのだいすきなキリン/蠍星
 
ので
ぼくはまた泣きたくなってしまった
キリンはちゃぷんとなみだの水溜まりから立ちあがり
細ぼそとした尾でぼくをうながした
背中におのりよと
彼はいつのまにかぼくを追い越して
ずっと背が高くなっていた
ぼくはキリンのたてがみに
メロンのような網目もようにほおを埋め
ユーフォニアムの音色のようないななきに耳をすましていた

ぼくのだいすきなキリンは

キリンはぼくをのせて
ぼくがかなしいときはなみだをぬぐってくれた
キリンはぼくのかなしみを
そのうつくしい毛並みに沁みこませて
頸を伸ばしていった

ぼくの部屋の天井になみだがとどいた
ぼくの家の屋根になみだがと
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