もう一度名前を呼ぶ声が聞きたくて/虹村 凌
もう一度名前を呼ぶ声が聞きたくて
もう一度「愛している」が聞きたくて
生きているのだとしたら
とんだお笑い種だと吐き捨てて
寂しそうな顔をして煙草に火をつける
あれから何度も季節を越えて
あれから何度か腹の上を通り過ぎたけれど
納得がいった事なんか一度も無かったよ
そう気持ち悪がるなよ
本当なんだ
鼻からティッシュを出すモアイ像をベッドサイドテーブルに乗せて
遮光カーテンの向こう側で朝日に揺られて魚になろうよ
もう一度名前を呼ぶ声が聞きたくて
もう一度「愛してる」が聞きたくて
もう一度その体温に触れたくて
気持ち悪ぃんだよ!
絶え間なく頭の中で虫は叫び続
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