上高地にて/
蒲生万寿
戸惑いや不安が無くなるに従い
この体もそれ程必要とはしなくなる
歩み行くにつれ
私は森となる
風の声
川の声
鳥の声
途絶える事なく
一つである
この生まれたばかりの
重い空気はどうだ
存在の確かさだ
私は最早、何ものにも囚(とら)われず
存在の真っただ中に居る
知性も感性も今は無く
何ものの隔て無く
私以前の私が
生まれる以前の私が
確実に蘇る
もう言葉も必要としない
空だとか
大地だとか
そんな名称など
あまりに
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