上高地にて/蒲生万寿
 
戸惑いや不安が無くなるに従い

この体もそれ程必要とはしなくなる

歩み行くにつれ

私は森となる

風の声

川の声

鳥の声

途絶える事なく

一つである

この生まれたばかりの

重い空気はどうだ

存在の確かさだ

私は最早、何ものにも囚(とら)われず

存在の真っただ中に居る

知性も感性も今は無く

何ものの隔て無く

私以前の私が

生まれる以前の私が

確実に蘇る

もう言葉も必要としない

空だとか

大地だとか

そんな名称など

あまりに
[次のページ]
戻る   Point(2)