オドゥ山統一展望台から見る詩/はらだよしひろ
いきるゆえ
指す陽も さんざめく
まなざしも いきるゆえと
すがた あるに
かげも ある
終わったのは僕ではなく時代だ と
言える口唇を どこに届けようか
溢れる笑いに届けようか
そこにあるトーチカに届けようか
(いま一度展望鏡を見る)
あの牛車を曳く農夫に届けようか
あの禿げた山並に届けようか
霞める雲もまぶしく
移ろいのみが地を這っている
形も在るがままに
言葉が沈黙となる
思えまいと過ぎる過去から発せられる
声無き大地が ふくよかにさえわたる
鳥の鳴き声から見える
時を同じく生きた血とて
富めるものは取り留めの無いものだけを残して
微々とも言えない喜びは
いつ訪れるのであろうか
始まったのは時代だと
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