ウイリーの風/剣屋
。それは俺も一緒だ。おっさんのセンチメンタルな過去の経緯なんて聞いても、こっちは感動もしねえし、共感もしねえ。共感ってのは、同じ場所で同じモノを見て共に感じねえと絶対わかんねえモンだからな。おっさんよ。飛ばすからしっかり俺に掴まってろよ」
すると白い夜霧が薄く立ち込める中、オレンジ色の眩しい光をニンジャが放ち始めた。
「行くぜ」
ニンジャは豪快に加速を開始した。車体を右に傾がせ、左に傾がせ、命の色をした赤いテールランプが幻影のようにたゆたう。暫くすると前輪が夜空に輝く三日月を刺さんとばかりに上向きになった。
ナナメは微笑しながら醜い男の顔を見ずに言う。
「これはな。ウイリーっていうんだ。人間を高い場所へ連れていく最高の技さ」
キリコとゼロを残してニンジャは油山のどこか遠い場所に消えた。
そこにはウイリーが巻き起こした素晴らしい風が吹いていた。
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