ウイリーの風/剣屋
血みどろの化石に成り果てたナナメが、歪んだ大の字になって倒れている。アスファルトに接したゆえの摩擦によるものだろうか、顔は煤色になっている。また顔中におびただしい裂傷が見て取れた。幸い厚手のレザージャケットとモーターサイクルパンツが身体を保護していたが、それでもなお四肢の損傷は激しい。ナナメの被っていたジェット型ヘルメットはパズルのピースのように破片となって散らばっていた。
わなわなと肩を震わせるキリコはナナメに身を寄り添った。普段の逞しいナナメの面影は、顔からも匂いからも感じられなかった。あるのは不吉な予感だけだ。
「ナナメ。起きて。早く眼を開けて」
反応はない。
「ちょっと、起きて
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