響水領/木立 悟
すうすうと水は目に入る
水には空に向かう手が映る
曇は過ぎてゆく
地には駆けるものがある
どこにも行けない火が
どこにも行けないことを知りながら
十月の光にはばたいている
遠い水へとはばたいている
木々と木々の間から
波打つ緑の原が見える
光を砕き 呑み込む色が
扉のように立っている
歌うものに目はひらかれて
曇の陽の端
かけらの指先
触れることなく地に触れてゆく
目は響きを見る
目は水源を見る
駆けゆくもの 降り来るもの
午後のからだにこだまする
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