夜に死なない/黒木みーあ
{引用=
ないていた。
どこか遠くで、日を捨てる音がする。昨日と、今日と、明日と。夜にさえ、抱かれない。わたしの、帰る道。立ち並ぶ家に人は居るのに、話声ひとつきこえない。石壁に反響する歩く音は、乾いた鼓膜を少しずつ圧迫していく。二つ目の曲がり角、ないていた。夜に刺さる声、二階建ての空き家。そのてっぺんできいきいと、風見鶏がないていた。それをいつも、いつもいつもどうにかしてやりたいと、思っていた。わたし、わたしは、たぶんわたしが思うよりもおかしくなっていたのかもしれない。頭が、ひどく痛かった。その日は、男のモノをくわえているのがいつもよりも苦痛で、とにかく頭が、痛かった。
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