ずうずうしかったような/砂木
かりを灯した 多分あるだけ
火はすぐ 燃え尽きた
そんな親切を受けた事のない私はとまどい
遠慮もしたのだが しかし 寒くて
嬉しいけど 何を話していいのかもわからず
どう断ったらいいのかもわからず かりて
その人が 降りる時に返した
真冬の暖房の届かない夜行列車
立ち尽くした十九の時
始発の電車にやっと 座りこみながら
あの人は かした手前返せとも言えず
がたがたふるながら きっと
いつ返してくれるのかと 思ってたんだろうかと
気のきかない うまくふるまえなかった自分が情けなく
寒さの中 立ち尽くすよりも
ぎこちなく疲れ
やはり 切符は とっておくべきだったと 後悔し
通りすがりに 防寒着を貸してくれた人へ
どうしたら良かったのだろうと
今 思い出しても
とまどう
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