ずうずうしかったような/砂木
 



正月中の 夜行列車は満席
故郷から 帰郷帰りの人々

暗い駅から ひとり 
座れないので
戸口のすぐ前に陣どる
会社は あさってから

荷物はひとつ
一晩中 立つのか
諦めて 戸口から動けない
見知らぬ数名と 列車に揺られる

真夜中をすぎると
立つよりも寒くて
暖房も届かない真冬
さすがに 震えてきた

その時前に立っていた男性が
自分の防寒着を脱いで 貸してくれた
たまたま 前に立っただけの人
断ったが 断りきれず 貸してもらった
服一枚で 全然違う でも 寒い

その人は がたがた震えながら
そのうち マッチに火を点けて
明かり
[次のページ]
戻る   Point(11)