怪物/
within
映しの輪郭が、まるで本当のことのように思える。かすれたいくつもの線が、ぼんやりとした眼で見れば二本。ぼやけた線は今の彼の心象。重ならない二人の自分が互いに認めない。彼は重ならないことを祈っていた。
干からびた川の底から陸に上がることができなかった魚たちが目を剥いて転がっている。
光は熱を孕み、徐々に水を大気に還元する。農夫たちは井戸を掘った。水と一緒に小さなとかげのような生き物が現れた。それが彼である。暑い夏の旱魃であった。
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