流些の刻 / ****'01/小野 一縷
 
燕星の光帯 
軌道上に照らし出された 月の名は 「174123」
その正面 太陽は黒く抉られ 
取り囲む 星々は 和音を溢して 弾かれる 
火花が飛び交う睫毛の隙間 
全ては冷えた煤に覆われ 大気は その屈折率と共に 震えている 
この空間において 光は 色彩を操る技法を失った 


枯れた大木の鍾乳洞に 六つの枯渇音が記された立方体が 凍えながら
幾つも転がり落ちている
鍾乳石より遥かに硬質な その立方体が一つ転がり出して
名のない音が 二三鳴る
灰色に氷結した湖面の上で 踊り子が 回転し始める
変形した爪先と か細い内転筋で 無味無臭の肉体と顔面を 回している 

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