接触への欲望、虚構による螺旋/葉leaf
 
 伊藤悠子の詩集「道を 小道を」(ふらんす堂)は静かに充実した石英のような親しさを感じさせる。多くの事象を切り取ってきているはずなのに、なぜか切り口が見えない。切り取られながらも事象は世界と連続していて、余白には、見えない文字で世界がびっしりと書き込まれている。

1.接触への欲望

いつしか
一匹の魚はただ骨となり
一枚の木の葉はただ葉脈となり
ふしぎなことに
骨と葉脈は一致しており
       (「木の葉と魚は」より)

舞踏の列の端の女の人
骸骨に導かれて
鏡を見たまま静止している
(中略)
石畳をのぼって行くとき
わたしのなかで骸骨がひとつ
のぼって行く
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