春告鳥と不如帰と鴉/板谷みきょう
 
まるで、することがないみたいに
夜の間、ずっと満ち欠けの月の境界線を
なぞっていたのは
愛の国から幸福へ行く為じゃないの
報復行きの切符が買えると聞いたから

「都市伝説かもね。」

「春が近いはずだわ。」

「鼻水が止まらないもの。」

「もう少ししたら、目が痒くなるのよね。」

「嫌になるわ。」

春の来ることを喜べなくなったのは
何時頃からなのだろう
体温計みたいな検査器を出して見せて
抑揚の消えた声を味気無く続ける

「赤ちゃん出来たみたい。」

眼差しを背けながら
宙空に細く渇いて吐き出した息に
掠れた声を乗せる

「鶯よりカッコウの
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