((心E/D房))/高梁サトル
 
わけ」
「そうそう、受精とか受粉とか」
「愛のお遊戯ってやつ」
「え?」
「あ、ごめん、ちょっと待って」
「…ごめんごめん、なんだっけ?」
「お隣さん今晩、カレーライスみたいでさあ」
「すごい匂いするから、今、窓閉めたんだけど」
「そう、うちのマンション、ファミリー多くってさあ」
「さっきから嬉しそうな少年の声が…」
「え?」
「ちょっと少年暴れ過ぎ、五月蝿いんだけど」
「あ」
「明日の用意あったの忘れてた」
「ありがと」
「じゃまたね」

けして男と女の関係に堕落せず
それでもぴったり上半身を寄せ合う僕らを
よく知る人間が
ぽつりと
「心房みたい」
と言った

そうかそれなら
デキソコナイでもお互いを
どうしようもなく守りたくなるのは当たり前

で、

見合わせた顔までなんだか似てきた錯覚に
血を分けた兄弟のような絆を感じてしまう
そんな僕らが
カーマ・ストーラを読み解ける日は

まだ遠い

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