砂の上の棒倒/プル式
 
物語の始まるみたいな
ぬるく湿って小雨がまじった風の朝にパタンパタンと鳴る看板と
何処からか聞こえる気がした
アンプの無いエレキのシャカシャカというセンチメンタル
雲は低くうねりながら
その顔をとてつもなく大きな龍や得体の知れない怪物に変えていく

どうどうと吹く風
漕いでも漕いでも前に進まない自転車をそれでも漕ぎ続ける
見え無い物語の中
僕の立ち向かう先にいるのは一体何なんだろうか
やあやあ我こそは
そんなふうにまだ僕はあの風車に向かえるのだろうか

駐輪場の隅
いつもの場所に自転車を停めて鍵をかける
帽子をぐっと押えつけ
駅に向かう風の中で、ガラン、と何かが音を立てた。
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