在処/寒雪
 
喉を掻きむしりたくなるのは
山の輪郭を際だたせる秋の夕暮れ
寂しげな街路樹は
話し相手を欲して
その幹を、枝を、四方八方に広げるが
望み叶わず
排気ガスに体を犯され空しく朽ちる
おまえは満足だったのか?
悲しい心を抱え
己を受け入れられたいが故に
他人の言葉の符号合わせに躍起になる


不意に
大聖堂から途切れ途切れの賛美歌が
救いようのない焦燥感を
おまえの手のひらは
いつでも空っぽ


ああ
空虚だった
おまえの心


古ぼけた写真の中
微笑むおまえ
あの頃みたく
肩を抱き合って笑えなくなった
振り払った右手が
今になって熱を帯びて
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