酔歌 - 8 / ****'04/小野 一縷
赤い落葉が 黄金の光に満ちた梢の先から
分離する その瞬間美の連続
細胞核が熱を帯びた怜悧
冴えに 一斉掃射される
ざわめく毛穴 震動する皮膚 揺れる骨髄
大脳は今 湖面の 木の葉 赤く血に濡れた
揺れる 暗い血液の波間に 揺すられて
酔った ぼくの主体性 自我が 揺らぐ今
青い空の下でだけ 青い石の向こう側が 透けて見える
大地は 甘味のある 土の色 毛細血管が走る 大地
暗い古木の 硬く濡れた根より 深い 土気色
この色彩感覚を逃がすな この言葉の可視力をだ
この揺れを乗りこなせ 指揮をとれ ロデオのように
今だけが 思い通りに できる
今だけが この手の中に この目の中に
滲み 輝き 波紋 瑞々しく 湧いてくる
ぼくの体温を被うヴェールの中心
その揮発点としての肉体の中心
ここ精神の中心 完全均衡の針 重心
ここで ぼくという瞬間事象は 何度も 幾重にも
身篭り 生まれ 消え 続ける
本来 空白の 空間の 中真 ここ に
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