ただ水があるだけの砂漠/佐藤真夏
 
船をたたむ)海岸からは海岸が見えなくてこれでは砂漠と同じです(海岸もたたむ


抜けそうな八重歯の揺れが開閉器 奇跡と破滅を行ったり来たり


(忘れたい)脳裏に散らかる消しかすはしろくてくろくてくろくてもろい(ざんがい)


あの霧を掴むための衰弱で脈拍からは明日が潤む


ろうそくが溶けるように泣くときもゼロにはなりたくないんだけれど(繰り上げないで)


宇宙船で遠くに逃げてしまいたい/膨らんでいく献血パック


増加する 短く浅い呼吸の底は 湿り始める、 沈没がくる。


太陽のお腹のなかで灼熱の小指を絡ませ合うゾンビ


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