お姉ちゃんのこと/板谷みきょう
 

「おなかが痛い。」と言ったんだ。

ボクは、スゴク驚いてしまったら
「おかしくておなかが痛いの。」と
お姉ちゃんは、また笑った。

「久し振りに笑ったな。」と
おじさんが言ったのを聞いて
ボクは有頂天になった。

けれど、お姉ちゃんは病名も知らされず
二十七才で死んでしまった。

お姉ちゃんに必要だったのは
一時の笑いなんかじゃなく
生きるためのいのちだったのに
ボクは
一度だけ笑わせること
それだけしかできなかった。
戻る   Point(6)