お姉ちゃんのこと/板谷みきょう
 
二十六才のお姉ちゃんが十月に入院した
おじさんはボクに
「入院してから笑うことを忘れたみたいなんだ。」と
ポツリと言った。

ボクは、お姉ちゃんを笑わせることができないか
そんなことばかり考えていた。
お姉ちゃんは、おなかに水が溜まるからと
管をおなかに差し込まれていた。

入院して四カ月目のことだった。
窓から見える大通り公園の
作りかけの雪祭りの雪像に
骨組があった。

ボクは、びっくりしておじさんに
その事を話したら、その驚きようが滑稽だと
おじさんが声を出して笑い始めた。
そしたら
それにつられて、お姉ちゃんも
小さく笑い声を立てた。
そして

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