蛇つかいたちの行進ラスト/吉岡ペペロ
 
一回賭けてみよう、と言って立ち上がった

舟券を買いおおきなガラスで仕切られたコースまえの観客席に座った
五十代後半以上の黒っぽい服のひとたちで溢れかえっている
レースがはじまるとおとなしかった雰囲気がとたんに変わった
舟券を目のまえにかざし舟券越しにレースにむかって叫びはじめた
ボートのエンジン音や選手の名前、数字の連呼、歓声がユキオを知らぬまに立たせていた

握りつぶされた舟券を踏みながらユキオはカタヤマとさっきあがった階段のほうへと歩いた
みなぶつぶつ言いながら階段をおりていた
まだレースはあるのできょうの運を受け容れた連中だろう
ふつうに階段をおりていても五十代後半以上の連中を押しのけてしまうような感じになった
肩と肩とがぶつかってカタヤマかと思ったらそうではなかった
カタヤマが見当たらなかった
カタヤマを探そうとしたがユキオは人混みのなかではそれをあきらめた

片山先生に、また会いたいなあ、

ユキオはそうつぶやいていた
すると突然ユキオに、あの風が吹いてきた






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