2010.3.29.月/榊 慧
 
 家から離れている間も、俺は何一つ忘れていなくって、で、そういうのが嫌になって20歳か25歳で死のうかと毎回考えて、じゃあ今勉強しなくてもよくなるなあと思って課題をやっていた。
 俺は何者にもなれないだろうな、というのが剥がれない。その前に剥がそうという意思もない。ない。人は忘れる生き物、って覚えてるおれは人じゃないかも、とかふざけてみる。過去なんて忘れなさいよ、と俺に言う人に過去はあるのだろうかとさめた視線を内心で送って処理する。過去なんて忘れちゃいなよ、馬鹿か、忘れられるのならもうすでに忘れているよ!…俺の意識しているところからは見えないところで勝手に色々動いているんだから俺にはどうにもでき
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