月 の 雫/鵜飼千代子
 
 お月さま取ってきてよ
 些細なことでボタンを掛け違えて
 へそを曲げてしまった私に

 ちょっと待ってろよ
 今、長いハシゴ作っているから


 そんな我儘を言ったことも
 すっかり忘れてしまった頃


 頼まれもの取ってきたよ
 握ったこぶしを差し出した

 きょとんとしている私の手のひらに

 まろい光を放つ透明な球状の
 ほど良い重み


 月の雫を取ってきたよ


 約束なんて守られないものなのよ
 と泣いた私に

 約束は守るためにあるんだと言った
 あなた


 泣きじゃくる私をしっかり抱き留めて
 俺があなたを守るから
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