月 の 雫/鵜飼千代子
お月さま取ってきてよ
些細なことでボタンを掛け違えて
へそを曲げてしまった私に
ちょっと待ってろよ
今、長いハシゴ作っているから
そんな我儘を言ったことも
すっかり忘れてしまった頃
頼まれもの取ってきたよ
握ったこぶしを差し出した
きょとんとしている私の手のひらに
まろい光を放つ透明な球状の
ほど良い重み
月の雫を取ってきたよ
約束なんて守られないものなのよ
と泣いた私に
約束は守るためにあるんだと言った
あなた
泣きじゃくる私をしっかり抱き留めて
俺があなたを守るから
[次のページ]
戻る 編 削 Point(10)