蛇たちの天体/吉岡ペペロ
言って口をとがらせたまま笑った
ユキオもツジさんも所在なくなって黙った
ユキオは坂本龍馬ならじゅうぶんじゃないですか、と言おうとしてやめた
後味の悪い帰り道だった
ぼくにもうひとりぼくがいたら、カタヤマの言葉を思い出していた
本社のベテラン社員たちは、なんで素直にカタヤマの言うことに耳を傾けないのだろう
ユキオはあけなくてもいい蓋をあけてしまったと思った
胸のあたりが淋しさでちいさく腫れていた
歩きながらヨシミに電話した
なあ、オリオンってほんと何処いっちゃったんかなあ、
いろいろ動いてるからだろうね、すごいんだろうね、ユキオ、あんたちゃんと立ってるか、
ユキオは明日シバタさんとしゃべろうと思った
ケイタイを持つヨシミのちいさな手を思った
それが星座のように一瞬、夜に座った
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