あどけのない空洞/真島正人
 
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それは

空洞と
いう名前の

留保に過ぎないのだと

口に出していた
或る夜

人はすべて
寝静まり

ベッドの上で時間が
ぐんにゃりとする

長い廊下のように

萎縮した
自意識が

かちん、かちんと
音を立てそうで、

音を立てない。

病院のような
嫌な静けさ、

赤茶けたタイルを
踏みにじる看護婦の

足音が欲しい



「記憶を
 泥酔させればいいのさ」


教えてくれた友人が

連絡を絶ったのは
ずいぶんと以前だ

僕は酒をやめ

しらふを維持し

この体の自由
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