花びん/山岸美香
廊下にある
黒板消しのクリーナーの台に
花も水も入ってない空っぽの
白い花びんがある。
生徒たちがふざけ合い、走り回るからそのせいで
花びんにぶつかるか、ぶつからないか
そんな状況をハラハラしながら見つめていた
触れそうなのに、皆なかなかぶつからない。
花びんを割ってしまうのは簡単で
ちょっと押せばすぐ倒れるだろうに、
女の子が友達との会話に夢中になって
クリーナーの台にぶつかった。――花びんは揺れただけ。
その白く陶器製であろう花びんが好きだ。
頼りない構造だが、
しっかりとしてどこか重みがある。そこに自分には無い
強い姿勢があるような気がするのだ
たとえ自分が割れるという危機の中でも
この花びんの様に美しくなれないだろうか
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