アクアマリンの憂鬱/中原 那由多
に落ちていた
今にも壊れそうなガラス細工は
どこか見覚えのあるものだったが
やはりそれは気のせいで
鼓動と共に揺れる光に照らされて
四方八方に砕け散る
拾ってやればよかった、と
後悔するには遅すぎて
怪我をしなくてよかった、と
嘘をつくにも遅すぎた
蒼い時間は無くなってゆく
微かに聞こえた呼び声と
淡い間接照明に甘んじて
一度、ここから逃げ出した
ミネラルウォーターはいつも同じ味で
息継ぎの中に隠れた自分を見つけてくれる
ドアの角にぶつけた右足の小指よりも
腹痛に耐えなければならないのは
自分で仕掛けた罠の場所を忘れてしまったから
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