花見直前/……とある蛙
 
三月の飛鳥山
王子駅から望むと
厳冬時とさほど変わらぬ
枝振りの樹々が
何の衣も纏わず
剥き出しではあるが
陽光に透けて
半月後の桜色の
淡い期待を靄のように
纏っている

穏やかな陽光の下
全く不似合いなスーツ着た自分の
人に話せぬ澱のような溜息が
京浜東北線の車両と共に
引きずられてゆく




小学生を連れた母親達
吊り革にぶら下がろうとする悪がき
それを止める母親達
ボリュームのつまみの家に置いてきた小悪魔どもは
あっちへ行ったりこっちへ行ったり
結局、母親もおしゃべりに夢中で
気づいたように子供に注意する振りをする。
何も変わらない子
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