夜の涯て / ****'02/小野 一縷
 

濡れた鋏の翼で ブリキの鳥が
夜を 透明に 幾重にも 裂いてゆく


路上の暗がりの奥と 知覚の裏側に
魂が 横たわって 繋がる 
そこに
黒い向日葵が咲き
黒い獅子が眠る
白鳥が首を垂れ 暗い泥に沈みこむ
夜に伸びる白い蔓 
夜に溢れる白い樹液


捻り 絞られる 眉間
鉄塔は燃える 高く 煤で 黒ずむ
路面は 軽金属の馬と 
摩擦熱を 競って 高め合う
瞬きは 繰り返し 氷着する 雷光の軌跡で
鋭く 意識の加速は 蒼く 冷たく 硬い


微細な 黒の間隙に 振り絞る 
一筋の 気化する 紅は 
微かな光を 引いてゆく音 
銀色に 震える 触
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