大鉄道旅行時代/片野晃司
そうして
列車は燃え上がる火山の山腹を廻り
向かい合って座っていた僕たちの
車窓から美しく災害が眺められた
列車のドアから乗客たちが飛び降りていった
飛び降りては降りそそぐ炎のように水鳥を抱えて舞い戻ってきた
噴石に打たれてばらばらになった男が
びっくりしたような目をして飛び乗ってきた
僕たちは手をつないだままで窓から飛び降りては
丘の上から列車を眺め何度でも飛び乗った
客車はどこまでも連結してどこまでも果てがないから
どこで乗ってもよかった
手をつないだままで
生木のようにふたりで山腹で燃えてもよかった
死んでいくきみを車窓から眺めながら
昼食のパンを食べるのもよか
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