大庭園/片野晃司
庭園を吹き渡る気流に乗って山脈を越えると
なだらかに広がる山腹の緑の森と
森に囲まれた湖
そして川があり滝があり
庭園を巡る園路は地形に沿って這い回り
緑の平原は地平まで広がり
その地平の先には薄暗く暗い海
その先に島がありまた海があり
その先にもさらにこの庭園は広がっているのだった
わたしたちは
この庭園で生まれ庭園で出会い
少年であり少女であり
手をつないで駆け回り
泥にまみれ
川を泳いで渡り
花を摘んで髪に飾り
夜は抱き合って眠り
園路の曲がり角で また分かれ道の真ん中で
ときには庭園を巡るひとの足元で
いつでも互いの性器に触れることができた
道す
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