冷たい血が俺を生かしている/ホロウ・シカエルボク
今夜は誰かが俺に抱かれてくれるだろうか
「さかさまのヘブン」のカウンターの
暗色のオーロラのような目をした女は
一度くらいなら俺とやってみてもいいなんて思っていないだろうか
財布の中の金はあと何日俺を楽しませてくれるだろうか
明日の明方にも俺は尿意で目が覚めるだろうか
そいつはこの上なく獰猛で
このうえなく強い顎の中に
鉄をも貫きそうな頑丈な牙を備えている
だけど死体だ、死体だ、死体だ、死体なんだぜ!
もう叫び声が許される歳じゃない
もう恐怖に任せてぶちかましていい歳じゃない
俺はなにもかも判ってるつもりだ
だけど死体であることが何よりも恐ろしいんだ
俺は自分のことを血の通った人間だと考えているだろうか
時々それすらどうでもいいことだと考えてしまうんだ
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