ありがとう/桜 歩美
に不幸だったと思います
だって生まれたばかりの君を
ちゃんと抱くことさえできなかった
一日の中で数時間君に寄り添うゆとりができたとき
君にミルクを与えてげっぷを出すのに
君を肩にもたれかけるように抱きながら
それでも私が眠ってしまいそうになったとき
お母さんは眠りながら涙をこぼしたのです
悲しかったの
大好きで可愛い自分の赤ちゃんのお世話が
ちゃんとできないことが
赤ちゃん雑誌に書いてあるようなお世話が
お母さんにはできないことが
夜泣きをしてるのに
君を隣りの部屋に置いてしまうしかなかった
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