生きて在り続けること ミシェル・ウエルベック 拙訳/banjo
 
に苦しいことがあり得るなんて知らなかった。子供時代、つまりこの瞬間に至る寸前まで、彼は幸福だったのだ。

ミシェルは決して忘れまい。苦しみで凍ってしまった自分の心と、音楽の美しい調べの対比を。彼の感受性が形成されていく。


世界が苦しみに満ちているのは、本質的に世界は自由だからだ。この苦しみは組織の一部が自由に作用するための必然的結末である。あなたはそれを知る義務がある。そして語らなくてはならない。

苦しみを目的に変化させるなど、あなたには出来まい。苦しみは「存在し」、したがって目的になどならない。

苦しみが僕たちに負わせる傷の中、生は暴力と陰湿を往復する。この二つ
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