羊雲/蒲生万寿
あれは昨夜
金色(こんじき)の鷹が
喰い散らした羊の群れだ
俺は見ていた
奴がゆっくりと西へ渡ってゆくのを
樹頂でトラフズクが野ネズミをほふりつ、はやし立てる
金色の鷹は
羊を爪で裂きくちばしで散切り
「今夜はこれだけしかいないのか」
闇に轟く一声発し
地上に居た俺の目と奴の目が合った
ヒスイの目に射すくめられて動けずにいると
「お前では喰いたりぬ」
そう言い捨て次の羊に襲いかかる
奴の目線から外れた俺の中で
太古からの血が蛇となって這いずり周り
舌先を震わせ促した
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