going to the moon/チアーヌ
 
.どうしてなのかわからないけれど、さっきよりましになったよ。でも、最後に、あなたにお願いがあるよ。抱きしめてもらえないかな。まるであなたは、わたしの姉君のような、母君のような気がされるから」
 もうお別れのような気がされましたので、姫君のほうも、なんだか急に寂しい気持ちになってしまいました。姫君は男の子をしっかりと抱きしめ、頬と頬をすりあわせました。
「ありがとう。ぼく、もう大丈夫だよ。あなたも、どうか立派なお后さまになってね」
「そうね。あまり気が進まないけど」
「そんなこと、言わずにさ」
「それじゃあね、さようなら」
 最後は、姫君は男の子からあっさりと離れ、送り出しました。
 
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