この部屋に海はありません。/あぐり
る明け方)
ながれるものをすべてこすりつけてわたしはあんしんしたいのです
うまれないうまれない、なにひとつうまれんのです
ぬるくなっているしたぎのなかにおちたあかさをわたしのうみにする
おなかを押すとぜんぶきえてくれるんではないかなと思いました
隣で眠るあなたのまつげが何かを予感して震えているのでした
それでもわたしはまた痛みを求めてあなたに抱きつく
そんな風にして溢れるまで
ながれるまで
あなたのぜんぶを求める
なんにもそだたないうまれないうみのうえでわたしたちはなんどだってだきあうしかすべがないんです。
すこしでも安心しようとして
またこすりつけるあかさはただ錆びたにおいのする血液で
それがあの澱んだ海ではないことだけ
ぼんやり眠りに堕ちる頭の中でまたたかせている
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