こいびと/はるな
 
のすべての不安がなくなったみたいなやわらかさや、髪をかきあげてもらうときに身体に風が通るような心地や。わたしはそういったものはきっと忘れないけど、あの窓からの道路や、大晦日の人ごみや、トースターの色は忘れちゃうね。あなたの色も形も、温度も重みも、全部忘れちゃうね。だから、あなたもわたしを忘れていいんだよ。
 そしていつか、新しく出会ったら、そのときはまた同じように恋に落ちようね。あの海みたいな。

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