蛇の謝罪/吉岡ペペロ
 
しいよ、

所長がですか、ユキオがつぶやくように聞き返した

ああ、きみとは違う会社の人としてね、もちろん筋が違うと担当も取り合わなかったそうだけど、

ユキオはあまりびっくりしなかった
自分でもよく分からなかった不安や不快感の正体が今はっきりと分かったからだった

この商売は、ぼくが死んでも、お客さまが死んでも、失礼ですが御社の担当者さまが死んでも、うちとお客さまと御社で、永遠にやってゆきたいんです、言いながらユキオはほんとうにそう思った

おかしなきれいごとを言うなよ、お客さんの言いなりなだけだろ、営業部長がユキオに怒鳴った

ほんとうに山頂なんてあるのだろうか、オレがここで踏ん張る意味なんてあるのだろうか、
ユキオはヨシミに会いたいと思った
なぜか分からないがヨシミに謝りたいと思った
ヨシミの指を抱きしめたいと思った
その指はヨシミの姿かたちと相似のかわいいかわいい蛇のこどものような指だった




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