海面上昇8/rabbitfighter
 
季節は移ろう。女の子たちのおしゃべりのように、とめどなく。話題と話題の間には縫目などなく、時に高く明るく、時に低く静かに。一人が席を立った後に沈黙が訪れて、その間に海面が上昇し、またおしゃべりが始まった後でも、水位は下がらない。

今夜は月を見に出かけよう。乱視の目にぼやけて重なる三つの月を。
今夜は月を見に出かけよう。美しい歌声を聞いたから。
何でみんな、俺に月を見せたがるんだろう。
今日は満月だよ、きれいな三日月だよ、月が雲を照らしているよ、
遠いんだ、月は遠くて、そこに暮らす人たちはいつも静かだ。

俺は運命を信じない。
俺は生まれ変わりを信じない。
俺は罪を認めない。
流れ落ちて行き場を失った涙が、また海面を上昇させる。

俺はただ、流れる水の力を信仰している。
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