海面上昇8/rabbitfighter
 
蝋燭の火で煙草に火をつけた。その蝋燭には赤い薔薇と黄色や青の花が散りばめられ、それらの花々の茎や枝は金色だった。母親の一人を弔うために、小さな町の教会で買い求めたものだ。教会の中庭には薔薇のアーチをくぐってはいる。足元には青や黄色の花が咲いていた。地元の人はそこを花の教会と呼んでいた。

もう一人の母親は布団の上で死んだ。誰も見取らなかったから、それが安らかなものであったかどうかわからない。生きていくうえで必要な形容詞を三つ選べといわれて、しばらく考えた後、生きていくのに必要な形容詞なんてあるんだろうかという疑問だけが宙に浮いたまま残った。安らかな死。厳かな死。完全な死。

窓の外で、季節
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