日本むかし話 妖怪糠肉擬/salco
むかしむかし、ここ印旛沼には妖怪ヌカニクギというのがおった。
変な奴での、
退屈のあまり村に来ては気に入った家の表札に手垢をつける。
一体何でそんな事をするのか、
その家の者に尋ねてみても、恨まれるような覚えはないと言うのじゃ。
それより汚された表札を拭かねばならないのだが、
これが何とも気色の悪い色でな、妙な匂いもする。
べたべたして落とすのにひと苦労よ。
他に悪さはしないのじゃが何ともまだるっこしい奴で、
そのでろでろした体のだんだら模様からも判るとおり
潔いのが嫌いなのか、
眉目秀麗な者や志の高い御仁を目にすると寄って来て、
ひと言の詫びも入れずにべたあーっと張り
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