表現手段について;覚え書き/salco
 
冷めを覚えながらも
いろがみの鎖輪じみた、この低劣な装飾は果たして
我々部外者の持ち寄った哀悼の仮面という偽善を
却って見事に照射するようだったにせよ。

そんな親父の浮薄な知性を
生前あからさまに憎んでいた息子と
そんな息子をもぎ取られ、
はらわたを抉り出されて来た叔母とを
心底憐れに思いつつ
同じく五体を引きちぎる肉親の悲痛を何とか
現在の境地から表現しようと試みた叔父の真意にも亦
偽りは微塵も無い事をかんがみれば
こうして犯しがちな愚を批評する資格など
私にも当然ありはしないのだが
いずれ饒舌は沈黙に命乞いする恥の上塗りに過ぎない事を
何故、70年近くも生きて来て分かっていないのかと
甚だ遺憾に思い、且つ神妙に自戒した事だった。

                           2004/01/05
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