表現手段について;覚え書き/salco
悲劇の色は何色だろう
色など在りはしない
それは叫喚と慟哭だけだから。
しかし悲しみは声をさえ持ち得るのだろうか
肉の塊は自己解説をしない
生きながらコンクリートに塗り込められて
息の根すらあるものか。
どんな人間がその心痛を
直截に表現する手段を持ち得るのか。
そこで17回忌法要の日、
一人息子を亡くした親戚宅の床の間には
“愛別離苦”
と素人習字の軸が仰々しく(明らかに)
叔父の手によって掛けられていた。
アイベツリク?
そんなもんじゃなかったろう?
したり顔の葬式坊主が吐くよな借り物の、
しかもケロケロリクと軽やかな語感じゃ?
と、俗物の猿知恵に興冷め
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