逃飛行/木屋 亞万
 
面に落ちる
振り返れば小さく光る僕らの足跡

僕らはずっと真夜中を旅する
夜から夜へ、眠りの街から眠らぬ街へ
逃げるように、追いかけるように
君の黒髪が夜空を縛る帯のように風に流され
僕の吐く息は細長い雲になって
すぐに消えてしまう

眼に星が入ったときは
鼻にキスをすれば治るさ
もしもさみしくなったら
思いきり雨を降らせるといい
僕らはいつでも僕らのままさ

だからそんなにも
つぶらなおでこで僕を見つめないでおくれ
そして全開の鎖骨をしまっておくれ
僕に背中を向けたところで
お尻のラインがぼんやりと
夜空に浮かんでしまっているよ

昨夜の夢のライオンが
目を覚ましてからも
消えないままでいるので僕ら
月へでも飛んで行こうかと思っている

戻る   Point(0)