襤褸を着た男/はるやま
 
私は使い古した水瓶の中にいた。
水は蒸発しかかっていて、僅かに足にへばり付くばかり。
ある日、大きな両の手がその空間の天井をずらし、私を拾い上げた。薄目で見下ろした水瓶の内壁には、藻のようなものがびっしりと張り付いていた。

気を失ったのか、次に目覚めた時私はどこかの小屋の中にいた。
外というのは目が利きやすく、私の灰がかった体毛も手入れがしやすい。
人の気配に感じて辺りを見回すと、細い木のような男がたった一人で飯を食らっていた。男は私に気付く。
「息があったのか」
そう言うと、私を膝に乗せた。
「お前はあの水瓶の中で、腐っていたのだと思ったよ」
男は自分の食っていた魚の乾いた
[次のページ]
戻る   Point(0)