平明な言葉で・あなたのための花束・西洋美学史講義B/真島正人
西洋美学史講義の
時間に
遅れた
教室に入ると
年老いた助教授が
美学について語っていた
「美は、本当は、存在しません。何かを美しいというと、それは嘘なのです。その人は、美を、冒涜しています。誇りのかけらもないやつです。僕は、そいつを憎みます。いいですか、美しいものは、ある一方から、ある角度から見て、美しいものなのです。それは、違う方向から見ると、醜です。醜い、腐乱した、でこぼこのものです。すべてが、そうです。いいですね。言葉に、誇りを持ってください。言葉に敏感であれば、嘘はすぐに、わかります。それが何をどこに持っていこうとするのか、言葉から、推測してください」
そして、
画布を撫でて
いとおしそうに
撫でていたのだ
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