「その海から」(61〜70)/たもつ
り
来るはずのない人の名を
待っている
今日は言葉の代わりが
見つからないので
チューリップの絵を描いて
終日過ごす
65
メニューに
僕の名前が書いてあった
隣の席の人が僕を注文したので
こちらへどうぞ
と店員に案内される
注文した人と対面する
負傷した人たちが
帰還してくるのが見える
66
慈しんだ
あの空を
この朝を
食卓のピーナッツバターを
素晴らしい、素晴らしいと言っても
それを咎める者など
誰もいなかった
67
眠っている人の
まぶたを押して歩く
みな安
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